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フォトグラファーとして、様々な媒体で活躍し、2014年4月からアートフォト認定講座監修・講師を務める宮木和佳子氏。フォトグラファーとして、また講師としての経験から、カメラや写真に関する疑問に答えます。前回に引き続き、「社交的な性格の方がいいカメラマンになれるの?」という疑問にお答えします。

 
■内向的な人に向いているわけは?
 

内向的な人ほど写真が向いている理由。それは、写真が「言葉で説明する必要がないもの」だからです。もっと大げさに言えば、「言語を超えて国籍を超えて一瞬で表現を伝えることができるもの」といえます。
 
私の講座では「説明しなきゃいけない写真はやめましょう」と伝えています。
 
例えば、写真を見せるとき「この写真は、ここに人がいたからここから撮影したかったんだけど、それがだめだったからこんな感じになっちゃったんだけど……」といった説明をしていませんか?
 
説明ではなく、言い訳に聞こえてしまいます。言い訳するくらいなら、何も言わずに見せられる写真ができるまで粘ってみましょう。
 
「説明はいらない!とりあえず、見て!」
これで見た人の胸を打つようなら、あなたの写真には力があります。
 
内向的な人は、説明をあまりしません。だからこそ、写真一枚の中にどういうものを写し込むか、それで伝わるのか、ということに意識が向きやすいのです。
 
誤解しないで欲しいのですが、「コミュニケーションツール」として写真があるのは構いません。それはとても素晴らしいことですし、積極的に行って欲しいです。写真一枚を通して、そこから会話が生まれる。これは本当に大事なことです。「言い訳」と「会話が生まれること」は大きく違いますからね。

 
■写真に「◯◯したほうがいい」という正解はない
 

この連載でも何度もお伝えしてきたことですが、「写真は自分の表現」です。
“自分”というものがまずしっかり出ることが大事なのです。
 
講座が始まると、よく生徒さんから「明るくはっきり写っているほうがいいんですか?」「風景も撮ったほうがいいんですか?」というような質問を受けます。
 
写真表現での題材選びなどで「○○したほうがいい」ということはありません。それよりも大事なことは、
 
“誰の指示を得なくても”
これを撮りたい!
 
と思えるものに出会うことです。それが例えば、世間で人気の「明るくて、背景がボケているかわいい写真」でなくても、春に綺麗な桜を撮ること、でなくても構いません。反対に、
 
「私マンホールの蓋を撮るのが好きなんです!」
「ゴミが気になる……撮ってみようかな」
 
最初のきっかけはそれでいいんです! 前編でお伝えした「私なんか違う」と感じたことのある方は、そういった「みんなが撮りたくて人気の写真」にはあまり興味がない方が多いです。
 
写真は表現ですから、自分の中にモチベーションがないのに、無理して人や流行に合わせなくていいです。それよりも、「私だけしかこの面白さがわかってないかも」というところからスタートして、それが他の人も、「あ、そういう視点で、こういう風に撮れるんだ!」と思われるところまで昇華できれば、それはとても素晴らしい表現といえます。

 
■唯一の被写体と出会えたら、粘って何度も挑戦すること
 

生徒さんには、いつか「自分にはこれしかない! と思えるような被写体に出会ってください」と教室でよく話しています。
 
それは結婚相手を探すのと同じくらい、簡単には出会えません。そして、出会うために、いろいろなところに行って撮影したり、誰かに頼んで撮影させてもらったりと、こちらの努力も時間も必要です。
 
最初は自分も周りも納得がいかない写真ばかりだと思います。人気の写真であれば、お手本にするべき写真がたくさんネットにも本にものっているので、参考にしやすいと思いますが……。そうではない被写体の場合、ほとんどお手本がありません。自分で生み出すしかないのです。
 
ですから撮影しても「なんか違う」「これで合っているのかな?」
とつねに不安を感じると思います。
 
でも!!!!!
それでいいのです!!!
そして、そこで諦めないこと!
 
そこで粘ることによってのみ「自分だけの作風」が産まれると私は思います。そして粘ったからこそ、ほかの誰のものでもない、唯一無二の写真ができてくるわけです。どんな写真家でも2~3枚で満足のいく写真が撮れるということはありません。粘りながら撮影をし、自分の中で対話し、「これだ!」という写真が撮れるまで、何度も挑戦しているのです。
 
努力して、頭をひねって考えて。時に苦しい思いもします。それはしっかりと写真に出ます。そんな写真は、本当にすごいパワーを持っています。たった一枚で、何も説明する必要もなく、見た人の心を打つことができるはずです。大事なのは、どう撮影に向き合うか、ということなのです。
 
■人の目を気にせず、心に感じたものを
 

写真は大人数でわいわい撮ることもできますが、基本的には個人でできます。題材選びも自由で、その数は無数です。たった一人で、誰かと協力する必要もなくできるのです。
そして見せる時も、写真を見てもらうだけでいいのです。
 
ですから、内向的な人や、人とちょっと違うかも……という人こそ、ぜひ挑戦して欲しいジャンルです。
 
誰に頼まれたわけでもなく、自分でやりたい! と思った写真表現ですから、
人の目なんか気にしないでください。
心に感じたものを追求していけばいいのです。
そしてそれを静かに自分の中で続けていく。
それだけで、きっと世界は変わっていくはずです。
 
アートフォト認定講座
 

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(プロフィール)
1980 年1 月10 日生まれ。福岡県出身。日本大学芸術学部写真学科卒業。在学中からカメラマンとして活躍し「金丸茂嶺賞」を受賞。2002 年、「日韓共同開催 若手カメラマン ON & OFF」で若手カメラマン50 人に選ばれる。3 年のアシスタントを経て雑誌、広告、ファッション、アパレルビジュアルイメージ撮影、写真集出版など活躍の場所を広げる。(有)アット・ウィルに在籍しつつ、2008 年11 月に株式会社ミニーナを立ち上げ代表取締役に就任。同年には西麻布にて初の個展を開催。2011 年(株)アットウィル、(株)ミニーナを退社し完全独立。2014年4月より、アートフォト認定講座監修・講師を務める。
 

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