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劣等感から生まれるアート

 

画家
横山奈美インタビュー

 

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遠くの柱 2015 麻布に油彩 455mmx380mm

巨大なトイレットペーパーの芯が描かれた作品や、一本のもやしが描かれた作品など、日常にあるささいな題材をモチーフにした作品の多い横山奈美さん。第8回絹谷幸二賞奨励賞や、第18回岡本太郎現代芸術賞入選など受賞した、今最も注目されている若手作家の一人。その制作のスタイルやモチーフなど、作品制作についてお話を伺った。

聞き手・文/浅井貴仁(ヱディットリアル舎)
 
 
自分を見つめ直すことから、新たな芸術が生まれる
 
 
――若手画家の創作支援、具象絵画の可能性を開くことを目的にした「第8回絹谷幸二賞」で奨励賞を受賞されました。独特なモチーフの作品が多い横山さんですが、そもそも絵を志すようになったきっかけを教えてください。
 

横山: 小さい頃から絵を描くことが好きでしたが、実は最初から画家になりたいと思っていたわけではないんです。小学生、中学生とごく普通の学生として過ごしていました。ところが、高校生になって進路について悩んでいたら、両親が「絵が好きだったじゃない」と助言をしてくれて。そこから美術大学があることを認識して、高校1年生の後半から美術の予備校に通いはじめました。

高校3年生で受験する専攻を選択するときに、先生から「頼まれて何かを作るというより自発的に作る傾向がみられるので、自分のやりたいことが活きる油絵科が良い」と言われて自分も「あっ、そうなのか」と思って油絵科を選びました(笑)。積極的な方ではなく内向的な性格だったので、色々な方の助言で自分の進むべき道を決めてきた、という感じです。
 
 
――大学生時代は、どのような勉強されていたのですか。
 

横山: 予備校では与えられたモチーフを自分がどう描くかというのが課題だったんですけど、大学に入ったら、モチーフも描き方も全て自由で、とても戸惑いました。でもその「自分で選ぶ」ということから、自分の表現がはじまるんだと気付きました。

現代アートも大学に入ってはじめて知りました。例えば日本の作家で奈良美智さんや村上隆さんという存在を知って、こういう世界があるんだという驚きと、自分は何を表現していけば良いのかなという悩みの中で、大学学部の時代はずっと悶々として生活していましたね。ただ、周りの同級生も含めて、外国の作家に憧れて、外国の絵画を参考に絵を描いているという現状があって、それが少し面白いというか、ちょっと変わった光景だなと思ったんですね。

油絵は、もともとは西洋から日本に輸入されてきたものなので、日本人である私達が、彼らと同じことができるのかなとそのときに思いはじめて。もし日本人である自分が絵画を描くとしたら、ピカソやマチスのように描けるのかなという風に考えたりもしました。

 

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写真:上野則宏 外側は本当の姿 2015 麻布に油彩 455mmx380mm

 
 
――今のスタイルが固まりはじめたのは、その頃からでしょうか。
 

横山: そうですね。大学院の1年生の頃に大阪市美術館で岸田劉生展をやっていて、それを観たのもきっかけの1つです。岸田劉生(1891-1929。近代日本を代表する洋画家)は内密な描写の作家という見られ方をしていますが、初期はゴッホやセザンヌに影響を受けていたのがとてもわかるような展示のされかたをしていたんです。その影響の受け方が、今の私達が西洋の絵画に憧れている事と変わらないんじゃないかと思いました。

やがて、そういった岸田劉生のような近代の描写方法というか、スタイルを借りて描くことで、「叶わない外国への憧れ」を一つの要素として描けるんじゃないかと思いました。

中学生のころから海外のアイドルや西洋絵画に憧れていましたが、実際はどうやっても自分がアイドルになれるわけでも、西洋の巨匠のような絵は描けません。そういった逃れられないような運命を受け入れるというか、日本人であるということを受け入れるところから、表現が生まれて来ると思います。
 

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女神になりたい女について 2014
木炭紙に木炭 650mmx530mm
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私はブリトニースピアーズ 2013
木炭紙に木炭 470mmx620mm

 
 
 
木炭画で「自覚」し、油絵で「解決」する
 

――木炭画と油絵の作品を制作していますね。油絵画ではささいなモチーフを描き、木炭画では人物画を題材としていますが、なぜでしょうか?
 

横山: 木炭画は、自分の憧れを自覚するために作っています。そして油絵は、叶わぬ憧れを持った自分自身を、捨てられていく運命をもったモチーフに重ね合わせ、そのモチーフを生命体や風景に見立てて描いています。宿命を負った自分自身やモチーフ、そして絵画を自立させるための絵画で、これは憧れを解決するために描いています。「自覚する」「解決する」ということを、その2ラインの作品群で同時に行っています。

私は、最高に美しいこと、そして今描く絵画とはこうあるべきじゃないかということを絵画として描きたいと思っています。それを表現すためには自分の足下というか、自分の置かれている状況、日本人としてのルーツや、今までどのように美術と向き合ってきたのかということを知ってからじゃないと作れないと思っています。

 
 
――そのモチーフを表現する際に、技法的な部分で何か意識していることはありますか?
 

横山: 最初にグリザイユ技法(単色の明暗で描く技法)を用いていますが、私の場合は白と黒の絵具で最初に描いてから、透明や不透明な絵具を少しずつ重ねていくという方法で描いています。グリザイユの後に色を重ねていくときは、例えばパレットの上で混色した緑色をキャンバスに乗せるよりも、まず、透明色の青を乗せてその上に透明色の黄色を乗せる。透明のフィルムを重ねていくように色を重ねると色味に奥行きが出て、すごく透明感のある表現ができます。
 
 
――最後に、これからアートを志す人に、アドバイスがあればお願いします。
 

横山: 誰かに憧れて作品を作るという人はたくさんいらっしゃいますが、憧れというのは自分が今まで見てきたものからしか生まれません。数十年の人生で感動したことや知識というのは限られるので、そこから飛びぬけたものは生まれないのではないかと思います。

それよりも、自分の持つ劣等感とかコンプレックスを見つめ直して、自分がもしかしたらダサいなと思っているようなものを受け入れて作っていくと、人の心を打つようなものや、見る人の内面にどんどん入っていくような、自分が思いもしなかったような作品が生まれて来ると思います。

そして、劣等感やコンプレックスは、個人の問題でもありますが、年齢や時代を問わず、多くの人に共通する悩みや深層心理でつながっている問題だと思います。もっと言えば、今の日本の現状や歴史の問題など、大きなところにどんどん繋がっていくと思います。その辺りを意識して、作品作りにチャレンジしていただきたいですね。
 
 
 
【展示概要】
展示タイトル やり直し

2016年6月(日程未定)

KENJI TAKI GALLERY(東京) 東京
東京都新宿区西新宿3-18-2-102

TEL/FAX 03-3378-6051

開廊時間 12:00-19:00 (日・月・祝 休廊)

http://www.kenjitaki.com/
 
 
【プロフィール】

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画家 横山奈美
1986年岐阜県生まれ。
2010年愛知県立芸術大学油画専攻卒業。
2012年愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画版画領域修了。

HP:http://www.namiyokoyama.com/
 
【受賞歴】
petit GEISAI#15 審査員 桑久保徹賞
愛知県立芸術大学2012 作品優秀賞/学生優秀賞
第19回岡本太郎現代芸術賞 入選
第8回絹谷幸二賞 奨励賞
 
 
 
 

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