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フォトグラファーとして、様々な媒体で活躍し、2014年4月からアートフォト認定講座(http://artphoto-lesson.com)監修・講師を務める宮木和佳子氏。フォトグラファーとして、また講師としての経験から、カメラや写真に関する疑問に答えます。第3回目はカメラの知識と技術の関係について教えてもらいます。

 
——知っている知識と使える技術は違う
 

アートフォト講座監修・新宿校講師の宮木和佳子です。
年末年始、撮影するものがたくさんあり「よーし撮影するぞ!」と思っていらっしゃる方もたくさんいると思います。習ったこともあるし、意気込んで撮影! でも、思った写真と違う……。教科書では、やったはずなのに……。
 
そんなことはありませんか? 
「習ったのにすぐに成果がでないのはなぜ?」と思ったことがある方。今回はそんな方のために、写真の知識や概念を頭に入れてからモノになるまでのお話をしたいと思います。
 
私が行っているアートフォト講座では、本講座を修了するまで短くても3ヶ月、長いと半年以上通っていただきます。インターネットなどで、「写真講座」と検索すれば、「2時間でわかる一眼レフ!」「一日でわかる基礎講座」など、非常にタイトな時間で習得できるとうたってある写真講座がたくさんヒットします。アートフォト講座も基礎を学ぶのですが、どうして同じような基礎なのに、1日と3ヶ月となってしまうのか? と思う方もいると思います。
 
最終的に私は自分にあった講座を選べばいいと思っているので、一日の単発でも後の撮影にしっかりフィードバックできれば時間も少なくて済むし、問題ないと思っています。
 
ではなぜアートフォト認定講座が単発に比べ時間が長いのか。これはカメラに限ったお話ではないかもしれませんが、「知ってる知識と使える技術は全く違う」からです。
 
例えばお料理。
レシピ本を見て、「こうやったらこの料理ができる!」と分かっていても、「いざ作ろう!」となったら完璧にできるでしょうか? 「ああすればよかった」とか「あそこが難しかった」など、実際に体験、体感してみると、「できなかったこと」が生まれてくるはずです。
 
そして同じ料理をもう一度作ってみると、前回の反省点を生かせたり、ロスも少なくなって、より理想に近づいた料理を作れるようになっています。この「経験値」こそが、技術習得への一番の近道なのです。同じように写真も、知識が最初に入っていることは大切なのですが、それを実際にやってみたという経験値があるかないか、ある程度繰り返して失敗をなるべく減らしているか、その蓄積がちゃんと残っているかどうかが、「技術」につながっていくのです。
 
アートフォト講座では、知識を入れるだけでなく同時に経験値を増やしていくやり方をしているので、単発講座に比べて時間がかかる部分もありますが、修了されるころには実際に撮影したからこそわかった体験や、経験値というものが、みなさんの中にしっかりと残っています。
 
単発講座と言われる学習は、短時間で知識を一気に入れてくれます。それを自宅に帰って自分に合うように整理し、言われたことを1つひとつ実際に撮影して体感出来れば、「使える技術」になると思います。ただ、復習としての撮影もせずにわかった気になって放っておいても上達はしませんし、むしろ忘れていくでしょう。これは何に対しても言えることですね。

 
——写真は道具を使った表現
 

撮影というと、どうしても芸術活動のような気になりますが、私たちプロでもテストシュートといって、データを集めるだけの撮影や、カメラになれるための撮影など、作品の前段階のような撮影を密かにしています。これは料理で言うと、ひたすら大根の桂剥きをやったり、タオルでオムレツを返す練習をしたりすることに似ています。案外地味な作業なんですが、来るべきシャッターチャンスを逃さないように、感覚や機材の使用感を体に染み込ませるため、日々作品を撮ることと同じくらい大切なことです。
 
写真は、自分のイメージや表現が一番大切ですが、アウトプットするのはカメラという機械です。カメラを自分の第二の目のように使いこなせていないと、自分の思い描いた写真を撮ることは難しいです。
 
アートフォト講座本講座を修了された方々の中にも、講座を消化したので「基礎はもう完璧!」と思っていらっしゃる方がいます。間違ってはいないのですが、基礎や技術というものは磨いておかなければさびてしまいます。何年も運転していなくて急にやって! となっても、知識はあっても快適に運転するのは難しいですよね。ただ基礎をしっかりやっておけばちょっと期間があいても、「あ、そうだった!」と思い出すことができます。
 
そう、思い出せるということは、それは知識ではなくすでにあなたの体に染み込んだ技術になっているということ。「習ったのに成果がでない」。そんな焦る気持ちもあるかもしれません。ただ技術の向上は、ゆっくりです。丁寧に自分の体に技術を染み込ませていくような気持ちで繰り返し撮影してみてくださいね。
 

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(プロフィール)
1980 年1 月10 日生まれ。福岡県出身。日本大学芸術学部写真学科卒業。在学中からカメラマンとして活躍し「金丸茂嶺賞」を受賞。2002 年、「日韓共同開催 若手カメラマン ON & OFF」で若手カメラマン50 人に選ばれる。3 年のアシスタントを経て雑誌、広告、ファッション、アパレルビジュアルイメージ撮影、写真集出版など活躍の場所を広げる。(有)アット・ウィルに在籍しつつ、2008 年11 月に株式会社ミニーナを立ち上げ代表取締役に就任。同年には西麻布にて初の個展を開催。2011 年(株)アットウィル、(株)ミニーナを退社し完全独立。2014年4月より、アートフォト認定講座監修・講師を務める。
 

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