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フォトグラファーとして、様々な媒体で活躍し、2014年4月からアートフォト認定講座(http://artphoto-lesson.com)監修・講師を務める宮木和佳子氏。フォトグラファーとして、また講師としての経験から、カメラや写真に関する疑問に答えます。第1回目は最も多く質問されるという、「一眼レフとミラーレスの違い」について教えてもらいました。カメラ選びに悩んでいる方、必見です。
 
——簡単な選び方を紹介!
 
写真講座の講師・監修を始めて半年経つのですが、その間、タイトルの質問に100回以上答えたと思います。普段、生徒さんからこの質問をされたら、使用用途、その方の体力、予算などを聞いて、いろいろな角度からカメラを検討し、何度も話し合います。まるでカウンセリングで、人によっては1時間かかることも……。そこで今回、一眼レフかミラーレスかで悩んでいる方が、自分で選べるように、その違いと簡単な確認法を紹介します。
 
少し書き方が端的な部分もありますが、私なりに今現在で思う答えを書きます。ニュアンスを受け取ってもらって、参考にしていただけたら幸いです (ちなみにあくまで趣味の範囲での購入においての考えです)。
 

——カメラを家電に置き換えるとわかりやすい!
 
一眼レフとミラーレス。「どちらもだいたい一緒」という人もいれば、「全然違う!!!」という人もいると思います。使い方によるので、一言では言えませんが、量販店などで販売されている他の家電に例えればわかりやすいと思います。
 
例えば10万円の冷蔵庫と5万円の冷蔵庫。どちらも新品で同じ時期に発売されたとしたら、10万円の方がより繊細に冷やせたり、自動で氷が作られたりと多機能です。反対に5万円の方はリーズナブルでそれなりに冷やせるけど便利な機能は付いていません。金額の差によって長所、短所が必ずありますよね。
 
では実際に10万円と5万円、どちらを買うか? と考える時、予算や使用頻度、10万の冷蔵庫にしかない機能がなぜ必要か、置くスペースなどなど、いろいろな事情や状況で検討して、どちらかを選びますよね。
 
これと同じ選び方を一眼レフとミラーレスで行えばいいのですが、冷蔵庫だとすぐ選べるのに、カメラとなると途端に複雑に考えてしまう方が多いです。まあ「冷やす」という目的と、半永久的に思い出を「残す」という行為は別物なので、仕方ありません。
 
ではカメラ選びにおいて最も気になる要素はなんでしょうか? それは「画質」です。
 
みなさん、口をそろえて、
「画質が綺麗な方がいい。一眼レフの方が画質綺麗なんですよね?」と言います。もちろん、そうなんですが……。
 
このなんとも言えない「画質」をどう考えるか、というハードルがカメラにはあるんですね。そのため、カメラ選びが途端に難しくなってしまうのです。
 
では「画質」について今のあなたがどんな風に考えているか、どんな風に向き合っているかを確認してみましょう。実は日々のカメラへの行動を見ればわかるので、いくつか質問します。
 

——普段の使い方で必要な画質がわかる!
 

まず写真の管理状態を確認しましょう。次の選択肢から1つ選んでみてください。
 

Q1:どのように写真を管理していますか?
 
1)メモリーカードに入れっぱなし。ためっぱなし 
2)PCに保存。フォルダ分けをせず、なんとなくコピーのみ
3)写真整理ソフトなどで日付やイベントごとにしっかり整理
 
いきなりですが、実は1と2を選んだ方はミラーレスで十分です(笑)。
3を選んだ方はさらに次の質問に答えてください。
 

Q2:撮った写真をどうしていますか?
 
1)カメラの液晶画面で見ているだけ。人に見せる時も液晶で
2)たまにメールでデータのまま送る
3)SNSやブログに載せる程度
4)L判プリントをする
5)A4サイズに引き伸ばしたりして、作品集としてブックをつくったりしている
6)プリントはしないけど、修正作業が鬼のように好き。細部まで拡大してめっちゃ見ている
 
どれを選びましたか?
1~4までならばミラーレスで十分です。5、6となると一眼レフを推奨します。
 
撮った写真をPCにバックアップせずに、カメラの中に入れっぱなし。人に見せる時も液晶で、という人が一眼レフを欲しがるということは、さきほどの冷蔵庫でいえば、10万円の冷蔵庫にペットボトル1本だけ冷やしているような状態なのです。
 
ペットボトルならそんなに繊細な冷やし機能はいらないし、大きさもいりません。なんなら一人暮らし用の小さい冷蔵庫でも全然いけちゃうって話です。中華料理に例えると、陳健一をわざわざ家に呼んで、カップラーメン作ってもらう(笑)くらい微妙な話なのです。
 

——PCの画面と生の写真の違いを知ろう!

 
一眼レフはもちろん画質はいいですが、「その画質を十二分に発揮するようなサイズや媒体にアウトプットしている」もしくは、「写真がこの先上手になったらそういうこともしてみたい!」と思っている人以外は、あまり意味がないのかもしれません。
(もちろん高画質ってことはそれだけお値段も高くなりますからね)
 
もう一度言います。「1~4で十分」という方は、そこまでの画質は必要ありません。
 
写真を披露するとしても、インターネットはあくまでインターネットです。PCのモニターは、人それぞれ色の出方が違うので、自分が見ている色やコントラストで、全員に同じように見てもらえるわけではありません。
 
また、SNS程度であれば、大きさがある程度決まってしまいます。あまり高画質なデータだと、今度はデータ量が重くなってしまい、開くのに時間がかかって途中で「やーめた」とされることも。
 
もっと言えば、ネット上の写真(フルサイズクラスでアップしているものを除く)は、パっと見て理解しやすいために存在していることが多いので、勝手にデータ量を軽くされている場合もあります。すると、撮影した時点よりももっと荒い画像になっている可能性があります。データを軽くするということは、たくさんあるデータ情報を間引くこと。つまり、軽量化=写真が荒くなることなのです。
 
データ量が十分でも、数センチの画面の世界で見た場合と、実際にプリントしたものを肉眼で見た場合、同じ写真でも大きな違いがあります。このように、自分が精魂込めて撮影した写真をきちんと色や明るさまでわかってもらおうとするには、PCは厳しい媒体なのです。
 
反対に、人のブログの写真を毎回拡大して見ていませんよね?
要するに、先ほどの1~4の選択肢でオッケーという人はそこまで画質が要らないのです。プリントも、画質が本当に生きてくるのはA4サイズからだと思います。実のところ、それより小さい写真ばかりであれば、一眼レフ画質は必要ありません。
 
5、6の選択肢のように、
 
「いつか個展をやってみたい」
「自分の写真を大きく引き伸ばしてみたい」
「ネット上で発表したいが、とにかく綺麗な写真にこだわりたい」
「よくわからないけど高みをめざしたい」
 
など少しでも興味がある方は高画質のカメラを持ってもいいと思いますし、そのトップクラスが一眼レフになります。適材適所というように、その人の使用用途に合うカメラが、その人にとって本当の意味での「いいカメラ」なのです。
 

——一眼レフでなくても、自分に合ったカメラを見つけよう!
 

一眼レフを買えば、自動的に綺麗にピントが合ってシャープで色合いが綺麗な写真が撮れる! と思っている方も多いようですが、そんなことはありません。
 
たとえ一眼レフであっても、ちゃんとした条件で撮影しない限り、スマホの方がきれいな写真の仕上がりになります。どちらがいいか一言で言えないのがわかっていただけたでしょうか?
 
ただ、この時代はとても多種多様なカメラが販売されているので、自分にぴったりあったカメラを持つことができる時代とも言えます。ぜひ、そんな自分だけのカメラを見つけて欲しいものです。
 

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(プロフィール)
1980 年1 月10 日生まれ。福岡県出身。日本大学芸術学部写真学科卒業。在学中からカメラマンとして活躍し「金丸茂嶺賞」を受賞。2002 年、「日韓共同開催 若手カメラマン ON & OFF」で若手カメラマン50 人に選ばれる。2004 年よりカメラマン室岡浩一に師事。3 年のアシスタントを経て雑誌、広告、ファッション、アパレルビジュアルイメージ撮影、写真集出版など活躍の場所を広げる。室岡浩一が代表取締役を勤める㈲アット・ウィルに在籍しつつ、2008 年11 月に株式会社ミニーナを立ち上げ代表取締役に就任。同年には西麻布にて初の個展を開催。2011 年(株)アットウィル、(株)ミニーナを退社し完全独立。2014年4月より、アートフォト認定講座監修・講師を務める。
 

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